11月21日にGoogle Deep Mind社のCEOのデミス・ハサビス氏が日本棋院東京本院へ来院し、井山裕太王座との記念対局、一力遼棋聖との特別対談が行われました!
(写真:左から4番目がサハビス氏)
目次
デミス・ハサビス氏と囲碁
井山裕太王座と特別対局「AlphaGoは囲碁界の衝撃」
デミス・ハサビス氏の挨拶「囲碁↔AlphaGo↔AlphaFold」
一力棋聖と特別対談「自ら学ぶ人工知能と今後のカギは専門領域+α」
まとめ
デミス・ハサビス氏と囲碁
デミス・ハサビス氏は、イギリス人の人工知能研究者、脳科学者であり、囲碁AI「AlphaGo」を開発したGoogle Deep Mind社のCEOです。
タンパク質の構造を予測する人工知能「AlphaFold」を開発した研究者の一人で、本年度のノーベル化学賞を受賞されました。
ハサビス氏はコンピューターゲームの開発者としての経歴もあり、幼いころからチェスの神童としても名を馳せました。チェスだけでなく将棋、ポーカーなどの名プレイヤーで、囲碁もご経験があるとか。様々なゲームをプレイされる中で囲碁もその一つにあったんですね。(「ボードゲームと囲碁」の記事はこちら)
ノーベル化学賞受賞となった人工知能「AlphaFold」は治療薬や新薬の開発を加速できるプログラムです。その功績を評価され、2024年度慶応医学賞の授賞式にて来日されました。自身も囲碁を打つハサビス氏と事前にコンタクトを取り日本棋院へ来院する運びとなったのです。
世界的なAI研究者と囲碁の関係に注目です!
井山裕太王座と特別対局「AlphaGoは囲碁界の衝撃」
写真:序盤から流行の定石を見せたハサビス氏(左)
対局後に井山裕太王座より、本局の感想を含めた挨拶が行われました。
【井山裕太王座】「ノーベル化学賞、授賞おめでとうございます。対局は序盤の30手ほどでしたが、一手も悪い手はありませんでした。囲碁界にとってAlphaGo(囲碁AI)の登場は衝撃的でした。囲碁そのものが大きく変わったと言えると思います。それぐらい大きな影響を与える存在でした。囲碁が、人工知能の発展に少しでもお役に立てたのであれば、棋士としてこれ以上の幸せはありません」
(囲碁でAIが人間に勝利する「AlphaGo」の衝撃!の記事はこちら)
写真:「幽玄」の間でハサビス氏と井山王座で記念撮影
「AlphaGoの出現で、囲碁の技術が革新的に進歩し、人類が発展していける未来を示してくださったハサビス博士の偉業に敬意を表し、心からの感謝とお喜びの気持ちを込めて最高位の九段免状を贈呈したいと存じます」と武宮陽光理事長
(写真左)
デミス・ハサビス氏の挨拶「囲碁↔AlphaGo↔AlphaFold」
【ハサビス氏】
「最高位の九段免状を頂戴いたしまして、また、素晴らしいキャリアを積み重ねてきている井山王座と対局の場を持たせて頂いて、大変光栄に思っております。
私が主に楽しんでいるのはチェスです。囲碁を始めたのは、ケンブリッジ大学の学部生の頃。数学的に見て、囲碁の奥深さに惹かれました。AlphaGo(囲碁AI)の開発で大成功を収め、AIの近代化への第一歩に繋がったのも、囲碁のお陰であり、私にとって囲碁は大切なもののひとつです」
写真:「囲碁が全ての始まり」と語ったハサビス氏
【ハサビス氏】
「AlphaGoは全世界に人工知能が持つ潜在能力を示したと考えています。AlphaGoなくしてはAlphaFold(タンパク質の構造を予測する人工知能)はなかったと思います。これからも、人工知能の力を借りながら多くの課題を解決していきたいです。 過去、現在で囲碁を楽しむ方がいたからこそ、AlphaGoの開発があり、それがAlphaFoldの開発に繋がったのです」
写真:12、13歳頃にチェスでマスターの称号を得ていたハサビス氏
一力棋聖と特別対談「自ら学ぶ人工知能と今後のカギは専門領域+α」
写真:予定時間が過ぎても「もう1、2問ならいいよ」とハサビス氏(右)
【一力棋聖】「AlphaGoがAlphaFoldの開発に、どのように役立ったのでしょうか?」
【ハサビス氏】「AlphaGoの開発は様々な面で貢献しています。まず、私達が開発しているシステムからAIがデータを学び、大きな成果を上げられることを世界に証明しました。また、AlphaGoの開発テクニックの多くが、AlphaFoldの開発にも応用できました。このテクニックは囲碁だけではなく、現実世界が直面している問題にも活かせることがわかったのです。
そして、今後もAlphaGoなどのテクニックの需要は増してくると考えています」
「AIエージェントシステムを開発しており、ヒヤリングやアクション、タスクなどをこなすことができるようになる」と更なる展望を語られた。
写真:インタビュー後に交流を深める両者
【一力棋聖】「AlphaGoが李世乭(イ・セドル)九段に負けた一局は、予想にない手を打たれて崩れた印象でした。今はどのAIも人間より高いレベルですが、人間が上回る部分もあります。今後、どのようにAIと向き合えばよいか、教えてください」
【ハサビス氏】「次のフェイズ、つまり、今後の10年間になりますが、人間の専門家がツールとしてAIを活用することで、より早く目的を達成できる流れになると思います。
つまり、専門家のスキルと知識をAIと組み合わせる方法が、囲碁に限らず、他の分野でも見られると思います」
【一力棋聖】「最後に、これからAIの仕事に携わる方へメッセージをお願いします」
【ハサビス氏】「まず、コンピューターサイエンスと数学はこれからも重要になりますので、その勉強をしっかりやってくださいということと、他の専門領域(生物学や化学、経済学など)を組み合わせた研究を目指してほしいです」
まとめ
囲碁がAI技術のベースになり、その発展系が人類の健康に画期的に役に立つことでノーベル化学賞を受賞。自身も囲碁を嗜むハサビス氏に、今回ご来院いただいた経緯がおわかりいただけましたか?
現代社会にも息づく、囲碁の世界の奥深さの一端が感じられませんか?
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