みなさん、しっかり睡眠時間を確保していますか?
「忙しい」を言い訳にして、眠る時間を削っていたりしませんか??
最近、睡眠の需要性が、科学的根拠と共にしっかりと示されるようになりました。
スペインが発祥の「シエスタ」といった長いお昼休憩を取る習慣も、今では日本でも好意的に受け取られるようになってきました。ちなみに「シエスタ(siesta)」という言葉は、ラテン語で「長い休憩」の意味とのことです。
私達、日本人は、世界でいちばん「休むこと」が下手だとも言われています。「休むこと」=「サボること」と、ついつい考えてしまうからかもしれません。
こういった長いお昼休憩を取る事で、生産性の向上や、ストレスを低減させる効果が認められ、日本でも多くの企業の注目を集めているのです。
また、社会問題ともなっている育児に関して、お母さんの産後鬱を解消するためには「7時間以上のまとまった睡眠」をとることが有効と結論づけられているようです。
育児の合間でも、家族で協力し、しっかりと休むことは重要なんですね。
寝ないで仕事をしていた時代!
このような睡眠によってパフォーマンスが上がるという概念は、今は普通かもしれませんが、ひと昔前は「身を削って働く」という行為が、ある種の尊敬を集めるという価値観が、世の中にあったと思います。
例えば、漫画の神様でも知られる手塚治虫さんの睡眠時間は、3日で3時間とも語られています。手塚治虫さんはほぼ睡眠を取らず、1日中部屋にこもって漫画やアニメを描き続けました。
同じく、世界的アニメ「ドラゴンボール」の作者である鳥山明さんの睡眠時間は、多忙の時は、なんと1週間で20分!4日間徹夜した後に、たった20分間の睡眠を取り、その後さらに3日間仕事をし続けたなんていうエピソードもあるのです。
今だったら絶対に考えられないですね。
ちなみに、「ゲゲゲの鬼太郎」などで知られる水木しげるさんは、どれだけ忙しくても1日10時間眠ることを心がけ、徹夜をすることはなかったそうです。睡眠を取らずに仕事を進めることに警鐘を鳴らしていました。
そんな水木さんは93歳まで天寿を全うし、2015年に長い人生の幕を閉じました。
睡眠にまつわる囲碁の珍事件!
長生きの秘訣は睡眠だけに限らないかもしれませんが、そんな大切な睡眠に関する囲碁の珍事件をひとつ。
1980年の出来事です。
囲碁の天元戦の挑戦者決定戦の対局の最中、夕食休憩後に眠り込んでしまい、なんと時間切れで負けてしまった棋士がいるのです。
それが関西棋院所属の牛之浜撮雄九段です。
場所は、市ヶ谷にある日本棋院。当時は、上層階をホテルとして利用することができました。棋戦の進行も今とは違い、当時は、夕食休憩があり、夕方から夜の対局が始まる形式です。
「天元」とは囲碁のタイトルのこと。今現在の金額をお知らせすると、賞金1200万円のタイトルです。名称は、囲碁の碁盤の中心の点を「天元」と呼ぶことに由来しています。
挑戦者決定戦は、勝者が「天元」のタイトルに挑戦できるという大きな意味を持った対局だったのですが、牛之浜九段はなんと「睡眠」によって、その対局を落としてしまいました。
夕方の対局に現れず時間切れの負けに。ベッドに横になってひと休みしていたら、そのまま寝落ちしてしまったという顛末だったようです。
囲碁を打ったことのない人にとっては、対局(試合)中に寝るなんてと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、囲碁の対局は長時間に及び、昼食休憩や夕食休憩を挟みます(当時は、日本棋院の施設内に宿泊施設もありました)。
また、この当時は、朝から始まり深夜に及ぶ対局も珍しくはありませんでした。
今現在は、国際棋戦の影響で、持ち時間が短くなっている傾向にあります。
もしかすると、この重要な対局のために、寝る時間を惜しんで研究をしていたのかもしれません。
とはいえ、挑戦者決定戦という重要な対局で「寝坊」による負けは、今も囲碁の珍事として語り継がれています。
対局前に睡眠を十分にとってパフォーマンスを発揮するという概念も、今に比べれば希薄だった時代と言えるでしょう。
頭脳スポーツである囲碁。睡眠の大切さ
前人未到の囲碁七大タイトル独占を2度達成し、囲碁界初の国民栄誉賞を受賞した井山裕太王座は、対局に合わせて精神面と体調面をより良い状態のピークに持っていけるように質の良い睡眠に拘っているとインタビューで語っています。
眠りが浅いことが続くと疲労が知らず知らずの内に蓄積され、集中力が途切れてしまうとのことです。
眠る時間も惜しんで勉強していた時代から、囲碁界の考え方も変わっているのかもしれません。
睡眠不足で、大事な局面での十分なパフォーマンスが発揮できない悔しさは推して知るべし。
皆さんも、しっかりたくさん睡眠を取って下さいね!!