皆様、囲碁の世界にも「タイトル戦」があるのはご存じでしょうか。
タイトル戦とは、優勝者にタイトル(称号)が与えられる棋戦であり、囲碁界では最も重要なタイトル戦として、棋聖戦・名人戦・王座戦・天元戦・本因坊戦・碁聖戦・十段戦を『七大タイトル』と呼びます。
先日、七大タイトルの中でも2番目に優勝賞金が高く囲碁棋士、囲碁ファンからも注目されていた「名人戦」にて、名人初防衛を果たした芝野虎丸名人の就位式が、東京都文京区のホテル椿山荘東京で開催されました!
今回は、皆様に馴染みがないであろう名人戦についてや、就位式がどのような雰囲気で開催されているのか、その様子をお届けしたいと思います。
実は囲碁が由来!?名人の語源について
囲碁に関わらず、日常生活で「あなたは○○名人だね!」と秀でたことを表現する際に、名人という言葉を使う機会は多くあるかと思います。実はこの「名人」という言葉、囲碁が由来になっているのです。
時は戦国時代、囲碁が大好きだった織田信長が、日海という僧侶の囲碁の腕を讃えて「そちはまことの“名人”なり」と誉め称えたことに由来していると言われています。その名人が現在のタイトル戦名として残されています。
名人ってどのくらいすごいの?
名人戦の優勝賞金は3000万。七大タイトルの中で賞金が3000万以上のタイトルは、棋聖戦・名人戦のたったの2つです。そのためタイトル戦の中でも極めて注目度も高く、勝負の世界で戦う囲碁棋士ならば一度は手にしたいと思う、名誉のあるタイトルの1つです。
ちなみに、「賞金」といえばで思いつくのは漫才日本一決定戦 「M-1グランプリ」は賞金1000万。将棋の「名人戦」の賞金額は推定2000万~2500万です。
今回の名人戦挑戦者は、井山裕太王座。名人戦の挑戦者になるためには、総勢488名の棋士の中から予選トーナメント・挑戦者決定リーグ戦を勝ち抜き一位になる必要があります。
この極めて困難な戦いを勝ち抜いた後に、たった一人の棋士のみが、この名人戦へ挑戦することができるのです。
允許(いんきょ)状授与・虎丸名人からの謝辞について
就位式は多くの棋士で和気あいあいとした雰囲気の中でアナウンスとともに開会しました。協賛企業様からのご挨拶後に、日本棋院・小林覚理事長から、允許(いんきょ)状※が授与され、会場は盛大な拍手に包まれました。允許状が読まれる瞬間は、静けさもあり、会場の緊張が伝わってきました。
謝辞に立った虎丸名人からは、タイトル戦の途中で行われたアジア大会における井山王座とのエピソードを交えて会場の笑いを誘いつつ、今回の反省を活かしてさらなる努力を続けていく、という力強いお言葉で締めくくられました。
※允許(いんきょ):認め許すこと。お上から与えられるもの。囲碁の「名人」は江戸幕府から公認の役職だったので、允許状が渡される伝統がある
参加者の様子について
会場には多くのプロ棋士がお祝いに駆けつけていました。また虎丸名人が小学生時代から修業した囲碁道場の師匠、洪清泉四段と現役道場生の子どもたち16人もいらっしゃり、虎丸名人を祝福する、子どもたち、そして棋士の皆様の熱い眼差しがとても印象的でした。
ー話題の推し活!虎丸ファンにインタビューしてみました
就位式が終わると、懇親会が始まりました。煌びやかな会場には、ビュッフェが用意されており、食べたり、飲んだりと楽しそうなお姿が見受けられました。
会場には、プロ棋士以外にも、青い花バッチをつけている一般の囲碁ファンの方がいらっしゃったので、虎丸名人ファンのSさんに直撃インタビューをさせていただきました!
Sさんは、画面に映る虎丸名人の微動だにしない対局姿を見て「この人全然動かない…」という虎丸名人への興味から、囲碁の世界にのめり込んだようです。その後は、囲碁自体の奥深さにも魅了され、現在は初段の腕前にまで上達。囲碁の友人もでき、このような素晴らしい世界へのきっかけをくれた虎丸名人には感謝しかないとのことでした。いつも中継で見ている「画面の中の推し」に会える機会は滅多にないので、一般参加費を払って会いに来ました、と名人就位式参加の理由も教えてくれました。
懇親会では、虎丸名人との会話や写真撮影を楽しむ様子がみられて、こんなにも距離が近く交流できることは、ファンにとってはたまらない魅力だと思いました。
アトラクションもあり
懇親会の最後には、虎丸名人vs道場生3名による9路盤対決が行われました。どちらが勝つのか分からないドキドキの展開が続くなか、結果は…両者が同じ陣地の数である「持碁」という珍しい結果に、会場も大盛り上がりでした!
虎丸名人の背中を追いかける、未来のプロ棋士の小さくて懸命な姿が、とても逞しく見えました。
嬉しいお土産も
今回は、名人戦就位式の様子をお届けいたしました!いかがでしたか?
名人戦就位式の最後には、虎丸名人就位記念の扇子のお土産がもらえます。
囲碁の世界に興味がある!名人の姿を近くで見てみたい!そんな方にはぴったりのイベントかと思います。
次期49期の名人戦は誰が挑戦者に躍り出るのか、今から期待が高まります。一般の囲碁ファンの方も多くいらっしゃりましたので、就位式に興味がある方は、ぜひ遊びにいってみてはいかがでしょうか。